二世帯住宅で失敗しないためのポイント
目次
二世帯住宅の失敗の原因は間取りにある場合がほとんどです。今回のコラムでは、二世帯住宅で失敗しがちな間取り例を3つとりあげています。対処方法もあわせてご紹介していますので、二世帯住宅の間取りをご検討の方は参考にしてみてください。
二世帯住宅の失敗の始まりはゾーニングから!?
二世帯住宅の失敗は、各室の配置、ゾーニング段階から始まっています。
ゾーニングとは、建物のどの位置にどのくらいの大きさで機能を配置するかを決めるプロセスです。
具体的に言うと、お風呂や、トイレなどを設けるゾーン、LDKを設けるゾーンなどを必要な大きさや並びを考慮しながら検討することです。ゾーニングは間取りに直結してくる非常に重要なプロセスです。
二世帯住宅の失敗を避けるためのゾーニングについて
建築設計では、ゾーニングからはじまり各機能を良好な関係で配置してからプランニングに移るのが基本です。住宅設計におけるゾーニングは次の3点を手がかりに行うことが一般的です。
- 東西南北の方位
- 敷地形状
- お客様から頂いたご要望
二世帯住宅ではこの他にも「世帯間の関係性」がゾーニングの条件に加わります。この世帯間の関係性が上手に解けているかが二世帯住宅の明暗を分けます。
セオリー通りのゾーニングだけではうまくいかないのが二世帯住宅のゾーニングなのです。
次の項目から実際にゾーニングに関係した間取りの失敗例をご紹介します。
二世帯住宅で失敗しがちな間取り例をご紹介
ここでは、二世帯住宅の間取りでよくある失敗例を3つご紹介します。
- 親世帯と子世帯の配置
- 水回りの配置
- 寝室の配置
これら3つの失敗例は、間取りのゾーニングの失敗が原因となっているものです。それぞれの間取りの配置が具体的にどのような失敗につながってしまうのか、みてみましょう。
二世帯住宅の失敗例:親世帯と子世帯の配置
二世帯住宅の計画で重要なのが親世帯と子世帯の位置関係です。
二世帯住宅の完全分離の場合には、上下、左右、2つの世帯の分け方がありますし、共有型の間取りでは共有するスペースの割合に検討なども行う必要があるなど、二世帯の位置関係の話だけでも、様々な検討が必要になります。
これと並行して住宅の要望に関する諸条件を整理する必要があります。親世帯の生活エリアを1階部分にしていたが、子どもの足音でトラブルになったという話はよく聞く話です。
上下で住み分ける完全分離型はトラブルが少ないと認識されていますが、小さな子どもがいるご家庭では、子どもの活動エリアと親世帯の主要な居室の位置が重なったことでこのような音の問題につながってしまったのです。
二世帯住宅の完全分離で失敗しない親世帯と子世帯の配置のポイント
二世帯住宅で失敗しない親子世帯の配置を検討する場合、上下階で分ける際に問題になるのが音の問題です。音の問題は上下での間取り間取りの重なりを考慮する必要があるでしょう。
例えば水回りは上下で同じ位置にくるように配置することで、配管ルートを集約させることができコストの削減と配管を通る排水の音の問題をクリアすることができます。
また、寝室とリビング・ダイニングが重ならないようにプランニングを配慮するなどの方法もあるでしょう。
二世帯住宅の部分共有で失敗しない親世帯と子世帯の配置のポイント
部分共有型の間取りにおける二世帯の配置では、プライバシーが問題になることが多いです。共有部分を仕切れるようにしたり、間仕切りや扉などを設け使える範囲を明確にしたりする方法もあります。
例えば、洗面所と脱衣所をしっかりと分けて使えるようにするなどの間取りの工夫が二世帯住宅における失敗を防ぐことにつながります。
このように、二世帯の配置に関しては、ご家族のライフスタイルごとに間取りを細かく検討することが一番の解決方法です。
設計者も間取りのトラブルを最小限に抑える配慮はしますが、お客様ご自身でも生活スタイルを分析し、どのような間取りが良いのかを整理する必要があります。
二世帯住宅の失敗例:水回りの配置
建築設計において、お風呂、トイレ、洗面・脱衣室は1つのまとまりとしてゾーニングを行うのが基本です。
二世帯住宅の場合でも、同じようにひとまとまりでゾーニングを行うことが多いです。
失敗しやすい例の1つにトイレだけ水回りのまとまりから切り離して計画するケースがあります。
高齢の親世帯の体力が衰えてもトイレにアクセスしやすいようにと、配慮をした結果トイレだけを切り離すことを希望する方が多いですが、配置を間違えると失敗につながります。
例えば、メインの居室、特にリビングやダイニングの近くに独立してトイレを設ける場合が水回りの配置の失敗例の1つです。
計画段階では、親世帯の利便性が考慮されていて良さそうに思えますが、実際に生活が始まると音や匂いなどが気になってしまうという問題の原因になります。
ご家族の強い要望がない限り、水回りはひとまとまりにして計画するのがよいでしょう。
二世帯住宅で失敗しない水回りの配置のポイント
もちろん必ずひとまとまりにしなくてはならないというわけではありません。
トイレを切り離してアクセスしやすい位置に配置する場合は、主要な居室の近くに設けるとしても廊下やホールなどワンクッション入るような間取りにするのがよいでしょう。
直接、主要居室に隣接して配置するのを避けるだけで、音や匂いが気にならなくなります。
水回りをひとまとめにすることで配管スペースも無駄なく配置することができるので、メンテナンスがしやすくなり、排水管を水が通る音なども緩和することができ二世帯住宅の間取りの失敗を回避することにつながります。
二世帯住宅の失敗例:寝室の配置
寝室は計画段階で問題に気付きにくい居室です。補助金や税金の優遇措置といった諸条件から木造で二世帯住宅を建築することが多いですが、木造建築物は「音を伝えやすい」という特徴があります。
親世帯と子世帯の寝室が横並びに隣接したり、上下で重なる分には大きな問題になりにくいですが、人が集まるリビングと隣接したり重なる場合は音が気になりやすくなり二世帯住宅のよくある失敗例になってしまいます。
予算に余裕があり、遮音性能などに配慮した仕様を選ばれる場合は特に問題にはなりませんが、遮音性能にコストをかけない場合は親世帯、子世帯の寝室の配置に配慮する必要があります。
二世帯住宅で失敗しない寝室の配置のポイント
寝室の位置は隣接したり、上下階で重なるようにしたり、逆になるべく遠くに離したりすることで失敗につながらないようにできます。
夜遅くまでリビングでテレビを見るご家庭、寝室でスクリーンに映像を投影してみるご家庭など家族の生活のスタイルによって寝室の配置を考慮するのがよいでしょう。
設計のヒアリングでは様々な内容を聞かれますが、ひとつひとつの質問には相応の意図があります。細かいことでも軽視せず、ご家族の生活習慣や特徴をしっかりと把握し、設計者に伝えることも重要なのです。
二世帯住宅で失敗しないためには慎重な間取りづくりを!
今回のコラムでは二世帯住宅の間取りを検討する際によくある失敗例をご紹介しました。紹介した3つの失敗例はよくあるものですが、他にも収納、玄関、お風呂、洗面所、リビング、ダイニング、キッチン、駐車場など、各室ごとに存在します。
二世帯住宅は1つ屋根の下で暮らす人数が増えるだけでなく、子どもからお年寄りまで年齢層の振り幅も大きいのが特徴です。
一戸建て住宅の計画以上に様々な配慮をしながら、慎重に間取りづくりをしていく必要があります。
二世帯住宅の失敗は間取りの他にも!?
二世帯住宅は親世帯と子世帯が経済的に協力して新築するケースが多いですが、ローンの支払いが残っている段階でどちらかの世帯が建物を利用しなくなることがあります。
このような場合には、片方の世帯がローンの支払いを全額負担することになるので注意が必要です。
建築時のお金の工面だけにフォーカスするのではなく、将来的なお金の計画も考慮することが重要です。
ファイナンシャルプランナーなどの有資格者に積極的に相談するなどして、サポートを受けるのも良いでしょう。
二世帯住宅で失敗しないお金関係のポイント
二世帯住宅のお金に関する問題が発生した際は基本的に子世帯が金銭的な負担を負う場合が多いです。
屋根や外壁が劣化した際のメンテナンス費用や住宅設備を刷新する際のリフォーム費用、税金など、子世帯が負担するケースが多くなります。
特に建物を設計する段階で決める屋根や外壁の仕様については、どの程度の期間でメンテナンスの必要がでてくるのか設計者に確認してみるとよいでしょう。
ある程度の経験がある設計者であれば材料の特性を理解していますので、メンテンスが必要になる期間やどのような場合にメンテナンスが必要になるのか具体的にアドバイスをすることができます。
他にも光熱費などの負担割合については、各世帯の占有面積に応じて負担額を明確にしたり、メーターを2つ設けたりする方法もあります。
リノベーションで二世帯住宅を取得する際の失敗も!
リノベーションの場合、工事が始まってから図面と現況の建物の躯体構造に不整合の箇所が見られるトラブルが発生してしまうことが多々あります。
既存建物の調査段階では、壁の中や天井の裏側まで細かく確認できないことがあります。
こればかりは実際に解体撤去工事が始まるまでわかりません。
もし図面と現況の建物が不整合だった場合、工期が延びたり、余計な工事費用がかかったりします。
私たちもリノベーションによる二世帯住宅の取得を相談されますが、このようなリスクを事前に説明し、工期や予算などを調整しやすい内容で設計するように配慮しています。
中古の物件を増築した二世帯住宅の失敗
既存の戸建て住宅を増築して二世帯住宅を取得する場合は確認申請の手続きが発生するかことを理解しておくことが重要です。
確認申請の手続きでは必要書類の提出を行います。
このとき、必要書類がそろっていないケースが多々あり、一番問題になりやすいのが、既存建物の検査済証の提出を求められるケースです。
検査済証は建築工事が完了したあとで、建築物を図面通りに工事したか検査が完了していることを証明する書類です。
この書類に不備があると、検査済証に代わる書類の作成が必要になり、調査費用や書類作成費用、場合によっては既存建物の是正工事などを行う場合もあります。
中古物件を増築して二世帯住宅を取得する際には、私たちのような一級建築士事務所に相談してください。不動産会社の方は増築の際にかかる必要手続きや必要書類についてしっかりと把握されていません。
物件の購入前に一級建築士事務所に相談すると非常にスムーズです。
二世帯住宅の間取りや設計、リノベーションでお困りの方
私たちは二世帯住宅の設計実績のある一級建築士事務所です。
一級建築士事務所として、法律や技術など建築に関する専門的なノウハウを駆使してお客様の二世帯住宅づくりを徹底的にサポートいたします。
ご家族の生活に合致した間取りの二世帯住宅をご希望の方は是非ご相談ください。