2022/02/10 間取り

二世帯住宅の完全分離で失敗しないためのポイント

目次

二世帯住宅の間取りで人気の完全分離型二世帯住宅。

二世帯住宅のなかではストレスやトラブルが発生しづらい間取りのタイプとされていますが、しっかりとした間取りづくりを行わなければ、当然様々な問題が発生してしまいます。

今回のコラムでは完全分離型の二世帯住宅の失敗例と失敗を防ぐためのポイントを解説していきます。

 

二世帯住宅の完全分離とは?

二世帯住宅の完全分離とは、共有部分が一切ない間取りのタイプをさします。

親世帯と子世帯が玄関、風呂、トイレ、キッチンなどを共有しないので二世帯住宅の中でも世帯間の接点は少なく、親世帯と子世帯が、それぞれ独立した生活を行うことができるのが二世帯住宅の完全分離の間取りの特徴です。

「家族どうしであっても精神的なプライバシーを確保したい」とお考えの方に、完全分離型の二世帯住宅がおすすめです

 

二世帯住宅の完全分離で失敗しないために、完全分離の分け方を知ろう

二世帯住宅の完全分離の間取りでは親世帯と子世帯を次の2パターンの住み分け方があります。

・上下で住み分ける

・左右で住み分ける

上下で住み分ける場合とは1階に親世帯、2階に子世帯というように各世帯を階で分けるものです。

一方、左右で住み分ける場合とは、いわゆる二戸一住宅と呼ばれるような1つの建物を内壁で縦に分けるものです。

それぞれの住み分け方のメリットとデメリットをご紹介いたします。

 

二世帯住宅の完全分離で失敗しないための、上下で住み分ける際のポイント

上下で住み分ける場合、親世帯が1階、子世帯が2階で生活する場合が一般的です。

この住み分け方が多いのには理由があります。それは、設計の際に1階の方が段差を少なくしやすいからです。

また、地面に近いので火災や地震などの非常時にすぐに外に避難することができる点も挙げられます。

子世帯が生活する2階へは外階段でアクセスする場合が多く、親世帯と子世帯のコミュニケーションが希薄になることを緩和するために、この外階段の位置や外構(=エクステリア)の作り方に配慮した設計を行うことで、健全な二世帯住宅をつくることができます。

上下で分ける場合には、排水管などの配管ルートの設計が重要です。

最近では、木造の二世帯住宅を検討される方が多いですが、木は音を伝えやすい材質です。

現代では、建築技術の進歩により音が気になる木造住宅は減ってきましたが、遮音性を必要としないPS(=パイプスペース:排水管などの通り道)の近くでは2階の風呂やキッチンなどの水回り、またはエアコンなどの水が流れる音が気になってしまうケースも。

ハウスメーカーでは、間取りの計画と設備ルートの計画は担当者が異なる場合が多く、配管ルートなどによる音の発生リスクまで配慮が行き届かないこともしばしばあります。

覚えていたら、配管ルートに関して確認や相談をしてみるとより精度の高い二世帯住宅に近づけるでしょう。

 

二世帯住宅の完全分離で失敗しないための、左右で住み分ける際のポイント

二世帯住宅の完全分離の間取りで左右に住み分ける場合は独立した2戸の二階建て住宅が合体しているようなイメージです。

この住み分け方の良いところは、上手に設計すれば、親世帯と子世帯のそれぞれが庭を持つことができる点です。十分な広さの敷地面積が確保しやすい郊外でよく見られます。

構造形式や仕様材料に関わらず、隣の世帯の生活音を遮断しやすい点もメリットです。

二世帯住宅の完全分離で左右に住み分ける場合に失敗につながりやすいポイントは、間取りによっては親世帯が階段移動を余儀なくされる点です。

親世帯に介護が必要になった場合、階段の上り下りのサポートをするのが非常に大変になります。

稀に家庭用エレベーターの増築のご相談を受けることがありますが、実はエレベーターの増築をするのにも調査が必要だったり、建築の確認申請が必要だったりと想像以上に大変になります。

左右で住み分ける場合は親世帯の住居の1階の占有面積を増やして、2階は少なくするなど生活の重心がなるべく1階になるように配慮した柔軟なプランニングを行うのが重要です。

 

 二世帯住宅完全分離の失敗例:親世帯と子世帯の配置

二世帯住宅の完全分離の計画で重要なのが親世帯と子世帯の位置関係です。

二世帯住宅の完全分離の場合には、上下、左右、2つの世帯の分け方があり、これと並行して住宅の要望に関する諸条件を整理していきながら間取りをつくっていきます。

親世帯と子世帯の配置の関係でよくある失敗が、親世帯の生活エリアを1階部分にしていたが、子どもの足音でトラブルになったという話はよく聞く話です。

上下で住み分ける完全分離型はトラブルが少ないと認識されていますが、小さな子どもがいるご家庭では、子どもの活動エリアと親世帯の寝室の位置が重なったことでこのような音の問題につながってしまうことがあるのです。

 

二世帯住宅の完全分離で失敗しない親世帯と子世帯の配置のポイント

二世帯住宅で失敗しない親子世帯の配置を検討する場合、上下階で分ける際に問題になるのが音の問題です。音の問題は上下での間取りの重なりを考慮する必要があるでしょう。

例えば水回りは上下で同じ位置にくるように配置することで、配管ルートを集約させることができコストの削減と配管を通る排水の音の問題をクリアすることができます。

また、寝室とリビング・ダイニングが重ならないようにプランニングを配慮するなどの方法もあるでしょう。

 

二世帯住宅、完全分離のメリットを理解して、失敗を回避しよう。

二世帯住宅を完全分離型には次のようなメリットがあるのが特徴です。

・プライバシーが確保しやすい

・光熱費の負担額を明確に分けられる

・それぞれの世帯ごとに間取りを設えられる

・賃貸など住宅の次の使い方を検討しやすい

 

二世帯住宅の完全分離ならプライバシーの確保での失敗を回避できる

二世帯住宅の完全分離型の間取りはそれぞれの世帯が独立した生活を送れるようになっているためプライバシーの確保がしやすいです。

二世帯住宅では間取りづくりを失敗してしまい、プライバシーを上手に確保できずにストレスを感じてしまうケースも少なくありませんが、完全分離型の二世帯住宅ではこのリスクが少ないです。

 

二世帯住宅の完全分離なら光熱費の負担額の失敗を避けられる!?

二世帯住宅で生活を送っていく過程で気になってくるのが光熱費ではないでしょうか。

特に子世帯は日中仕事などで外出することが多いですが、親世帯は終日自宅で過ごすということもほとんどです。

夫婦2人で生活していた時の光熱費のイメージのまま、二世帯住宅での生活を始めると光熱費の価格が結構高額になっていて驚く方も少なくありません。

完全分離型の二世帯住宅では、世帯ごとに電気メーターや水道メーターを設置し、請求もそれぞれに分けることができる点はメリットがあります。

ただし、水道や電気、ガスなどのインフラの引き込み工事や基本料金については二世帯分かかることも理解しておきましょう。

 

二世帯住宅の完全分離ならそれぞれの世帯ごとに間取りを設えられるため失敗が少ない!?

共有型ではどちらかの世帯の希望の間取りの設えを基本としてプランニングを行う必要があります。

例えば、玄関を共有する二世帯住宅で親世帯の生活に配慮したバリアフリー設計を採用しながら、ウォークインシューズクロークを設けるとします。

この場合には、収納スペースや車椅子に配慮した際の回転幅に余裕がなくなってしまったり、段差の処理を行う際に高さの関係がまとまりにくくなったりします。

完全分離型であれば、それぞれの世帯ごとの要望を間取りに反映した使い勝手のよい設えにできます。

 

二世帯住宅の完全分離なら賃貸など住宅の次の使い方で失敗しにくい

完全分離型の二世帯住宅は「長屋」に該当します。

長屋は集合住宅やアパートなどに採用されている建築物の形式です。

将来どちらかの世帯が二世帯住宅で生活をしなくなった場合にも賃貸利用やその他の用途として活用する場合を検討しやすいのもメリットといえるでしょう。

二世帯住宅を賃貸やその他用途で再利用する際には、場合により用途変更の確認申請の手続きが必要になりますので、気になる方はお気軽にご相談ください。

 

二世帯住宅の完全分離の将来活用の意外な失敗

前述の通り、完全分離型の二世帯住宅は他の間取りタイプに比べると賃貸利用がしやすいです。

しかし、賃貸市場で借り手に選ばれる競争力を獲得できるか?という点は全く別の問題になる点は理解しておく必要があります。

 

完全分離型の二世帯住宅が賃貸市場で競争力を獲得するのは難しい!?

完全分離型の二世帯住宅を賃貸できるように整えても、入居者に選ばれにくいのが現実です。

賃貸での競争力獲得が難しい理由は次の3つではないでしょうか。

 

・賃貸する際には住宅設備が古くなっている

・隣接する住戸の音やプライバシーの確保がされにくい

・交通アクセスや利便性が悪いことが多い

 

賃貸する際には住宅設備が古くなっている

住宅設備の型が古いのは、それだけで入居者からのイメージがマイナスになってしまいます。解決するためにリフォームをすると費用もかかってしまいます。

 

隣接する住戸の音やプライバシーの確保がされにくい

完全分離型の間取りといえど、家族同士で生活することを前提として設計されています。

家族だから許容できていた生活音や視線なども賃貸の場合にはプライバシー性能の問題として挙げられるケースも少なくありません。

交通アクセスや利便性が悪いことが多い

賃貸市場では、駐車場の有無や交通アクセスなどの利便性も指標になります。

二世帯住宅が建つ土地はほとんどの場合、住居系の用途地域に建築されているため、駅から遠かったり、周囲にお店が少なかったりなど、生活を行う上での利便性の部分で普通の賃貸アパートやマンションに劣ってしまうのです。

以上のように、賃貸利用へのハードルは低くても賃貸市場の競争力を獲得し入居者に選ばれるのか、ということには結びつかないのです。

 

二世帯住宅の完全分離の売却が失敗しがちな理由

「二世帯住宅の完全分離であれば、売却する際に有利!」というセールスコピーもよく見られますが、二世帯住宅を中古で購入するニーズがそもそも少ないということを理解しておきましょう。

二世帯住宅の賃貸利用や売却のお手伝いまで約束している業者様がいない理由は中古の二世帯住宅を購入される方、または、もともと二世帯住宅だった物件に入居される方が少ないのが理由なのです。

 

完全分離型の二世帯住宅、失敗しないための相談先は?

新築で二世帯住宅を建てる際、様々な住宅メーカーの二世帯住宅を見ているのではないでしょうか。

大手の住宅メーカーを利用する最大のメリットは価格です。安いものは1500万円~2000万円代のものもあります。かなりお得な価格設定がされていますが、大手の住宅メーカー設計の特徴には、

・間取りの型がほとんど決まっていて間取りの検討に時間がかからない

・床、天井、壁、キッチン、トイレなどの仕様がきまっており、仕様もローコストのものが多く採択されている

などがあります。よく住宅メーカーの営業担当者の方は「完全オーダーメイドは高い!」などと言うこともありますが、それは昔の話です。

 

二世帯住宅の完全分離で失敗しないコツはオーダーメイドです!

私たちのような設計事務所には決められた間取りも仕様もありません。

お客様のご予算の条件に合わせて建物規模を柔軟に調整し、また仕様にかかる費用も全てお客様に合わせてカスマイズできます。

限られた予算に合わせて柔軟な設計ができるという点で言えば、住宅メーカーよりも設計事務所の方が適しているでしょう。

 

二世帯住宅の間取りや設計、リノベーションでお困りの方

私たちは二世帯住宅の設計実績のある一級建築士事務所です。一級建築士事務所として、法律や技術など建築に関する専門的なノウハウを駆使してお客様の二世帯住宅づくりを徹底的にサポートいたします。ご家族の生活に合致した間取りの二世帯住宅をご希望の方は是非ご相談ください。